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D.S.~ダルセーニョ~のブログ(仮)

自分で勝手に考えたことを色々書いています

更なる財政出動は必要なのか?

※動画や記事をまた多めに引用しているので、記事自体が重くなるかもしれません。ご注意ください。

 

・きっかけは高橋洋一氏の主張から

 今回はこちらの記事から思ったことを書きたいと思う。

 経済学者の高橋洋一氏はここ数か月にわたってこの記事に書かれている主張をずっと繰り返している。簡単にまとめると、安倍政権の財政出動で雇用が改善されて人手不足に陥る企業が多くなった。就活の売り手市場状態がまさにその典型例だと言えよう。安倍政権の財政出動により失業率が改善されたが、高橋氏によると更なる財政出動失業率がもっと下がれば賃金が上がるとのことだ。具体的には失業率が2.7%まで下がれば賃金が上がるとのことだ。だから政府は更に財政出動すべきであり、そうしなければ賃金は上がらないと述べている。

 この主張を私はいつも聞いていて、いつも納得できないでいる。なぜかといえば、高橋氏の主張を逆から申せば、失業率が2.7%に下がらない限りは、政府が財政出動しない限りは、未来永劫賃金が上がらないという事になる。ところが企業がたんまりお金をため込んでいるのは周知の事実だ。

 いわゆる内部留保であるが、2015年度は377兆円とのことだ。が、ちょっと調べてみればわかることだが、実は媒体ごとに15年度の内部留保の額がバラバラだったりする。が、それでも平均して310兆円以上内部留保が日本に存在しているのは間違いないだろう。2016年度はさらに内部留保の額が上がっていることが見込まれる。それだけ企業がお金をため込んでいるにもかかわらず、どうして賃金が上がらないのか?こんなに企業がお金を持っているにもかかわらず、財政出動をもっと行わなければならないのか?私は高橋氏にこう質問したい。

---内部留保は賃金に変えられない?

 が、一方で内部留保は賃金に変えられないとも言われている。そもそも内部留保は企業の資産とも呼ばれており、土地や建物・機械・設備が内部留保になっていると言われている。が、内部留保は別名を利益余剰金とも言う。つまり利益で余ったお金を「不測の事態」に備えて資産化しているのが内部留保だという事だ。その「不測の事態」というのは、バブル崩壊リーマンショックといった大規模な世界恐慌であるとのことだが、日本を相次いで襲っている自然災害については不測の事態ではないのだろうか?と疑問を投げかけたい。東日本大震災内部留保を使わなかった企業が大勢あるのだから自然災害は「不測の事態」ではないのだろう。今後起こる「不測の事態」に対処するための内部留保とのことだから、賃上げには使えないという事であろう。恐らく高橋氏もこちらを見越して内部留保を賃金に変えることは説かないのだと思われる。だからもっと財政出動を行うべきだと説いているのだろう。

---「不測の事態」っていつなの?

 だが不測の事態に備えるための内部留保というのは、逆に言えば不測の事態が起こらなければ使われないとも言える。欧州危機やチャイナショック(?)においても内部留保が使われなかったのだから、それらは不測の事態ではないという事になるが、これら以上の事態が起こらなければ内部留保は使われないという事になる。そして仮に起こったとして、どう内部留保を活用するのかが実は疑問だったりする。これらをお金に変えて従業員の賃金にでもするのだろうか?不測の事態のための内部留保と言われているが、いざ実際に使うとなった時にどう使われるのか疑問なのではないか?

 仮に不測の事態に備えると言っても、300兆円以上のお金が企業に眠っているのもまた事実だ。だからこそ日本経済は絶対に崩れないとも言えるのだが、それらが使われないままとなると、その分回復もしないのではないだろうか?だから日本の景気は一向に回復しないのだと私は考える。

 まとめると、高橋氏は更なる財政出動が賃金を上げられると仰っているが、現状の企業が大量にお金を持っていることから、財政出動をしなくても内部留保を少し、それこそ100兆円ぐらい崩して賃金を上げることだってできるのではないだろうか?またその内部留保は不測の事態が起こらない限りは使われないのだから、300兆円も眠らせておくのは、それこそ無駄ではないだろうか?つまり財政出動を行わなくても内部留保を切り崩せば賃金は上がるのではないかという事だ。

・人手不足は単純に企業の問題

 また企業の人手不足に関しては、単純にブラック企業が多いから人手不足になっていると考えられる。高橋氏も記事で就活生が労働環境の悪い企業を敬遠していると仰っている。その労働条件の改善は金融緩和で雇用環境が良くなることで改善されるとのことだが、雇用環境の改善と労働環境の改善はイコールなのではないだろうか?労働条件が悪いから人が集まらないのだから、企業が労働条件を改善すればいいだけの話ではないだろうか?それは金融緩和関係なく企業でできるはずのものではないだろうか?つまり労働条件を改善するための金融緩和をする必要はないのではないか?と言いたいのである。

---金融緩和以外の方法でも労働条件の緩和はできるはず

 むろん労働条件の改善のために政府が何かを行う必要はあるかもしれないが、それは必ずしも金融緩和だけに限らないはずだ。例えば、全ての業種・全ての事業所において週一日は必ず定休日を儲ける法律を作る。これだけで労働環境が劇的に変わる企業は多数存在するはずだ。つまり金融緩和だけでなく法律の施行といったもので労働条件の改善は行えるのではないか?ということである。

 また雇用環境の改善というのは、恐らく正社員登用を増やすというのもあると思われるが、労働者の中には正社員になりたくないから非正規で働いているという人だって存在している。正規と非正規の一番大きな違いは、時間と企業に縛られないことだ。価値観が多様化しつつある今日、働ける日や時間を選べる非正規雇用を重視している人は、私は少数派ではないと思っている。お金さえもらえればそれでいいという価値観は、特に若い世代において薄れていると私は思っている。価値観の変化から正社員になりたがらない人が増えている状態において、ただただ正社員を増やせばいいというのもどうなのだろうか?

 実際の所、2016年度の有効求人倍率は平均して1.3をキープしている。

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 これは求職者一人当たりに一つは必ず求人があるという事を意味している。にもかかわらず一向に失業率が下がらないのはなぜか?それは高橋氏の指摘通り、求職者が求人を選り好みしているからである。単純な求職者と求人の割合を求めたら、一人に必ず一つは求人が存在しているという事になる。が、その求人内容が必ずしも自分の希望に会うとは限らない。そもそもブラック企業の求人だって存在している。そしてそれを敬遠しているという実態があるのが、今の就活の実態だ。確かに求人は存在しているが、その求人を労働条件などを踏まえて選り好みしている現状があるから、失業率が一向に改善しないのだと思われる。悪いのは選り好みする求職者なのか?それとも選り好みされる企業なのか?そしてこのような状態で財政出動失業率を下げることが、果たして本当に正しいことなのだろうか?

・そもそも財政出動をしたところで企業が賃金を上げなければ意味はない

 更に根本を言えば、高橋氏の言う通り更に金融緩和を行って実際に失業率が2.7%に下がった所で、企業が実際に賃金を上げてくれなければ意味はない。高橋氏は失業率が2.7%になれば賃金が上がると仰っているが、本当に失業率が2.7%になれば企業は賃金を上げてくれるのだろうか?失業率が2.7%になったとしても、混迷する世界経済を理由に賃金を上げない可能性だって出てくるはずだ。失業率が下がることと賃金が上がることは同じ存在が行う事ではない。前者は政府が、後者は企業が行うもののはずだ。つまり政府がいくら頑張ったとしても、企業が頑張ってくれなければ意味がないという事なのである。資本主義社会で民間企業が多数存在し、賃金は政府が挙げることにならなくなっている今日の社会。政府ができることは賃上げを要請することしかできないのである。つまり最終的には企業が賃金を上げてくれなければ意味がないのである。政府と企業が一体にならなければ景気は回復しないのであって、高橋氏は政府にだけ文句を言って企業の側には何も言っていない。そのことは高橋氏はわかっているはずだが、なぜ企業の方の問題を言及しないのか疑問でしかない。

 まとめると、高橋氏の主張は政府にだけ努力を要請しているのであって、その政府の努力に企業が報いる必要があるとは一切言っていないのである。むしろこれまでの私の反論(?)から考えると、問題があるのは政府ではなく企業なのではないかと思っている。確かに高橋氏の言う通りの事をすれば賃金は上がるかもしれないが、それはあくまでも可能性であり、最終的に賃上げを決めるのは企業自身だ。何度も述べるが、政府が財政出動をしたとしても企業が賃金を上げなければ意味がないのである。この部分の企業に着いて全く言及していないので、私は高橋氏の主張に賛成できないのである。

・企業への問題提起を行っている人達

 高橋洋一氏が財政出動をさらに行うべきだと主張している一方で、私の意見に近い主張をしている人物がいる。その人物は、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏である。具体的に彼の主張を見てみよう。

※特に36:28頃から。こちらの長谷川氏の主張は、

「年度別の資金過不足に関して、企業と家計と政府の借金と資産とを足した額は赤字だが、それは企業がため込んでいるから。企業の過不足は黒字になっている。それを出さないのが問題」

「本当の企業活動というのは、借金してでも投資をして、それでリターンを上げるのが普通の企業活動。溜め込んでいるだけの企業は、もはや企業ではない」

「日本は実は健全な資本主義の形ができていない」

「企業も家計もお金を出さないから政府が出すしかなくなる。しかし政府が出したお金というのはほとんど海外に流れていっているという現状がある」

※特に30:00頃から。こちらの長谷川氏の主張は、

「日本経済のアキレス腱は企業にある。企業経営者の皆さんにぜひ給料を上げるか、設備投資をする、あるいは新事業にチャレンジするといった、溜め込んでいるお金を使うことをやってもらいたい」

アベノミクスの足を引っ張っているのは、意外にも企業経営者なのではないか?」

  先ほどの私の主張と合わせて見てもらうと、長谷川氏と私の主張が似ていることに気が付くはずだ(ほぼ9割方同じで、長谷川氏の話は私の主張を保管してくれるもの)。

 良い機会なのでこちらも合わせて読んでみることをオススメする。というか読めばわかるが、長谷川氏が2016年12月のラジオ番組で述べたことを、その数か月前に私は主張していた。だから私は凄い!だなんて驕るつもりは全くないが、長谷川氏が私の主張とほぼ同じ主張をラジオでしてくれたことは、本当にありがたかった。

 また労働者に関しても以下のようなコラムで主張していたりする。

 現在は会員登録をしないと閲覧できないようになっているのでご注意。ちなみに長谷川氏のコラム(一つ目)が物議をかもしたことがあるとのことだ。

 こちらで少しはわかるかな?

 長谷川氏も高橋氏もニッポン放送のザ・ボイス!そこまで言うか!に出演している論客であるが、一日違いでこうも違った論調が繰り広げられるというのもボイスの魅力である。

 長谷川氏の他にも企業への問題提起を行っている人物がいる。例えば、麻生太郎氏だ。

 麻生太郎氏が2017年1月4日の大発会で発言したものは次の通りである。

「われわれもいろんな言葉でしつこく言っているんですが、企業も稼ぎながら内部留保をためている。デフレの時代はモノの値段が下がるから、持っていればカネの値打ちがあがるんだけど、今は違うんだから。その金を設備投資に回すか、賃金を上げるか、何かしてもらわないと、そのまま内部留保が増えるだけ増える」

なんのために、そして『税金は安くしてくれ』と言う。法人税を下げて、その税金をどこに使うんですか。また内部留保ですか。そういった話は金融の方もぜひパートナーとして、企業との間でコミュニケーションをさらに良くしてもらうということが大事なので、コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)だとか、スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)だとか、いろんな話をやらせていただいてます。これを単に口で言うだけでなく、実行に移していかなければならないと金融庁としても考えているというのが正直なところ。私どもとして、手数料だけで生きているのではなくて、リスクを取ってやるというところに銀行の目が向かないと、企業というのはなかなかうまくいかない」

「企業の収益は最高を記録しておりまして、その稼いだカネがどこに行っているか。通常ですと配当か賃金か、設備投資の3つに回るのが基本ですが、3年間で総額75兆円の内部留保がたまって、給与に回ったのが3兆円。これだけ設備が老朽化していて、金利がただ同然の時代にどうして進まないのか知りませんが設備投資が8兆円。残りはじーっと持っておられる。何のために。私どものとこに来られて『税金を下げてほしい』と言われる。下げてどうするんですか、また内部留保を増やすんですか

 麻生氏のこの発言はあまり取り上げている所が少なかったが、私は結構重大な発言なのではないかと考えている。財務相兼金融担当相の発言というのが一番のポイントだ。

 他にも産経新聞の田村秀夫記者がこんなコラムを書いていたりする。

 要約すると、「企業の自由は尊重されるべきだが、日本の産業界はあまりにも自国軽視、海外優先に偏重しすぎているのではないか?政治の口先介入を拒むなら、経済界は自主的に「日本第一」を意思決定要因に加えるべきではないか?」ほとんど最後に書かれている文章の引用だけど。

 私の主張はこれに「企業が日本第一主義になれないのは自虐史観教育を受けているから」がつく。

 以上のように、高橋氏の主張に反論するかのような企業こそが問題だという主張は、去年の年末から今年にかけて増えてきている。恐らく今後もこの主張は増えると思われ、2017年の春闘の結果次第では更に増加すると私は考えている。いずれの主張も高橋氏の主張に反論するものではなく、企業こそが問題だと説いている。つまり財政出動をしなくても企業側にできることがあるのではないか?と問題提起をしているのが上記の主張なのであり、特に長谷川幸洋氏は企業が果たすべき役割を果たしていないと強く批判している。

・政府が悪いのか?企業が悪いのか?

 以上、高橋氏とは違った視点で日本経済を見ている人達の主張を取り上げた。ちなみに高橋氏と同じ主張は、同じ経済学者の上念司さんも行っていたりする。経済学者とそれ以外とで見事に主張が分かれているのが興味深い。

 さて、読者の方々は高橋氏の主張と長谷川氏や麻生氏の主張のどちらを支持するだろうか?私は長谷川氏や麻生氏の主張を支持する。それは先にも書いた通り、仮に財政出動を行ったとしても企業が賃金を上げてくれなければ景気は回復しないからだ。むろん高橋氏の主張通り、政府の財政出動が足らない部分はあるだろう。しかし財政出動だけでなく企業努力というのも景気回復には必要なのではないだろうか?私も長谷川氏も財政出動はしなくていいと主張しているのではなく、企業が賃金を上げてほしいと主張しているだけである。財政出動と賃上げはイコールではない。それについては先ほども説明した。そして企業がお金をため込んでいるのもまた事実。麻生氏はそれに苦言を呈しただけだ。高橋氏のように財政出動が足りないと叫ぶのはいいが、同時に企業の問題にも目を向ける必要があるのではないだろうか?財政出動が足りないと叫ぶ人たちに上記の問題提起をしたいがために、今回の記事を書いた次第である。

・要点のまとめ

 今回の記事の要点をまとめると次のようになる。

※きっかけは高橋洋一氏の主張。財政出動をさらに行って、雇用環境の改善を行って、失業率が2.7%にまで下がれば賃金が上がる。

 ↑これに対する反論は次の通り

・全般の反論

 財政出動を促す前に、溜め込んでいる企業のお金を活用することができるのではないだろうか?

 また財政出動を行ったとしても、企業が賃金を上げてくれなければ意味はない。

・雇用環境の改善について

 そもそも雇用環境の改善と労働条件の改善はイコールではないのか?

 仮に雇用環境の改善が正社員登用だったとして、多様化している日本社会の今日において、正社員になりたくない人も増えている。その人たちの事を考えない正社員登用はいかがなものか?

 そもそも雇用環境の改善は政府が財政出動を行わなくてもできるのでは?

・人手不足に関して

 人手不足なのは単純に労働環境が悪い企業が悪い。労働環境の是正のために政府が財政出動をする必要があるのか?むしろ財政出動以外の法案とかで労働環境の是正はできるのではないか?

          ⇓まとめると、

  財政出動しない政府よりも、適切な企業活動を行っていない企業の方が問題

 

以上